その砂浜に現れたのは・・・
チャップリンのような黒ハットに、つりズボン、
サンタクロースが持つような袋を担いだ、小柄な男性でした。
会計士風のどんなクレバーな存在が現れるかと想像していた私は、ちょっと拍子抜け。
そのほころびた様子に、思わず、
「どうして、そんなズタボロなの?」
「旅をしておりました。あなた様がお呼びになるまではと、必要とされるところを廻っておりました」
「あなたが本当に、宇宙口座の管理人?」
「うぃ、マダム」
サーバントのように、礼儀正しく左手を胸に膝をしずめる。
「あなたに言えば必要なだけ出してくれるって・・・本当?」
「はい」
そう言って、担いでいた袋の中から、家具だの家だの、ガラクタのように見えるものまでいくつか取り出してみせる。まるで、ドラエもんのポケットだ。
物もありなんだ・・・・・口座と言うより、貸し金庫?(物欲が多い私ならではか?)
「じ、じゃあ、お金をお願いします」・・・・思い切って、言ってみる。
「うぃ、マダム」
即答で胸のポケットから、これまたズタボロの札束を取り出し、うやうやしく差し出す。
めくれ上がった、使い古したお札の束、それも片手で掴めないほどの。
「本当に、あるんだ・・・・(外国のお札だけど)」
たくさんの人手と様々な状況をめぐって束ねられた、そんなぬくもりをも感じさせる札束を目の中に収めていると・・・・何かがスーっと引いていくような感じがしました。
そういえば、袋の中の物たちも、中古品ばかり・・・
私が古いもの好きだって言っていたから・・・?
何らかの理由で要らなくなったものを世界の果てまで尋ね歩き、
わたしのニーズに合うものを探し出して、
いつでも出せるように用意してくれていた・・・?
日に焼けた顔、埃だらけの姿・・・
ひたすら、私の「出してください」の声がかかるのを待って・・・
涙がポロポロ落ちてきた。
なぜだろう・・・なんでこんなに泣けるんだろう・・・
「わたし、主人がしてくれているんだとばかり・・・あなたの存在なんて・・・・」
「いいえ、それでいいんです」と、優しく微笑む。
ちっとも偉ぶらない、黒子のような人・・・こんな優しい存在が私の管理人だったなんて・・・
主人の存在も今生での彼のエネルギー表現のひとつなのかな・・・
『やりたいことがあります。私に、お金を出してください!』
思えば・・・権利や義務を謳うことなく、初めて主人に純粋に頭を下げたあのとき、
何かが「カチッ」と開いたような気がしていたけれど・・・
宇宙金庫の扉だったとは・・・
そして、暗証番号は、この「セリフ」。
この「セリフ」を忘れてしまった私は、なんと永い間、この世界で心細い思いをしてきたんだろう・・・
そして、何でも良く忘れる私は、そんな大事なセリフもまた忘れてしまうのでしょう。
でも、
そのセリフが自然に湧いてくる状況を宇宙が何度でも創り出してくれると今は信じられるから・・・・
そして、
ズタボロの風貌ながら、上品で優しいエネルギーを放つ、どこか懐かしい存在にここで再会できたから・・・・
これからは、
安心して歩いて行くことにします♪
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